2016.09.01
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あなたの国の温暖化対策は十分ですか? 気候変動対策の進捗を測るための一般公開シンポジウム開催報告

イベントの様子

2016年8月26日(金)都内にて、上記シンポジウムを開催しました。シンポジウムにおいでいただいた多数の方々に厚く御礼申し上げます。

シンポジウムの目的

 2015年12月のCOP21で採択されたパリ協定では、すべての国が2030年近傍の排出削減目標(約束草案)を提示し、その達成に必要な緩和策(温室効果ガス排出削減策)を講じることが義務とされました。また、目標達成に向けて導入された政策に関しては定期的に報告書を公表することも規定されました。しかし、この新しい制度の下、報告書で報告すべき項目や、報告された政策の評価方法については今後の議論に委ねられています。
 このような状況をふまえ、海外ではすでに気候変動対策の評価方法に関する研究プロジェクトが実施されていることから、国際的にも最も知られた研究プロジェクトのリーダーをお招きし、各国の温暖化対策の評価方法に関する国内外の研究成果の最前線を紹介していただくとともに、今後の気候変動対策のあり方について議論することを目的としました。

プログラム

講演1 Open Climate Network (OCN)による国の温暖化対策評価
タリン・フランセン氏 Taryn Fransen (世界資源研究所 (WRI))

 米国にあるWRIではかねてよりOpen Climate Network (OCN), Climate Analysis Indicator Tool (CAIT), Initiative for Climate Action Transparencyという3つの研究プロジェクトを並行して実施してきました。特に一つ目のOCNでは、いくつかの主要途上国に入り、現地の専門家とともに排出削減政策について議論し、別途作成した排出予測モデルを用いて、対策の排出削減効果を定量的に示しています。効果的な対策オプションを示すためには、政策のスタンダード(採用すべき政策の水準)の選定が重要となります。

講演2 Climate Action Tracker(CAT)による国の温暖化対策評価
ニコラス・ヘーネ氏 Dr. Niklas Höhne (NewClimate Institute)

 ドイツにあるNewClimate Instituteでは、他の複数の研究機関と連携してClimate Action Trackerを公表しています。ここでは、公平性原則にもとづく努力配分の計算、セクター別低炭素化指標、グッドプラクティス政策パッケージの3つが含まれています。1、2では排出量を元に定量的な計算を行うことで政策の十分性を間接的に示していますが、3つ目の政策パッケージでは、政策の厳しさはさておき、目的に該当する政策の有無をチェックし、マトリックスに示すという定性的なアプローチをとっています。このような異なるアプローチのパッケージで政策を評価することが有用です。

パネルセッション
モデレータ:高村ゆかり(名古屋大学)
討論者:エンジェル・スー氏 Angel Hsu (イェール=シンガポール国立大学(Yale-NUS))
パネリスト:講演者他、田村堅太郎(地球環境戦略研究機関(IGES))、有村俊秀(早稲田大)

冒頭、スー氏より、講演者へのコメントを含めつつ自身が代表を務めている環境パフォーマンス指標について説明した上で、政策評価を行う上での3つの課題として、(1)透明性(データが得られにくい)、(2)ベースライン(基準)の設定方法、(3)国の対策だけでなく企業や自治体、都市等さまざまな主体が独自の活動を行うようになっているが、これらの活動をどう評価するか、が挙げられました。また、田村氏からは、このような政策評価を進めるためにはパリ協定を前提とした国際制度の下でいかなる制度設計が必要かという問題提起がありました。有村氏からは、政策評価指標を用いた評価結果を提示するといかなる立場から批判やコメントが来るかという質問がありました。さらに、フロアから多数のご質問をいただきました。

これらの質問やコメントに対して、フランセン氏からは、パリ協定で提示されている排出量目標(NDC)が、日本のように絶対量であれば透明性があるがBAU比(対策がない場合と比べた目標の設定方法)だと検証が難しい、2020年までの政策評価の手続きは甘かったことが判明しているので、今後のGlobal Stocktakingで我々が実施していているような評価手続きが求められている、日本を含め多くの国がエネルギーの低炭素化をより早く進めるべきといった回答がありました。

ヘーネ氏からは、国の絶対量での排出量のみならず部門ごとの指標を見ることが重要、どのような方法で政策評価するにせよ、ある程度の主観が入ってしまうことはやむを得ないが、問題提起として政策決定に対するトリガーの役目を果たせればよい、日本の石炭火力新設は長期的には技術的な機会の喪失につながるかもしれない、という回答がありました。

スー氏からは、国や各主体に対して、情報開示を求めていくことがこのような政策評価に不可欠、国をランキングするタイプの指標では、前年度よりもランクが落ちた国から問い合わせがあるが、批判を恐れずそうなった理由をきちんと説明できることが大切、という回答がありました。

総括

現在の国の排出量目標を合計しても長期目標である2℃あるいは1.5℃目標には達成しないことが明らかとなっている今、各国の気候政策を実施してその結果が出るのを待つまでもなく、事前に政策を評価し、進展が期待できるものについては進展を促していくことが重要と結論し、閉会しました。