気候変動対策の進捗評価を目的とした指標開発に関する研究 環境総合研究推進費2-1501 (2015-2017年度) 気候変動枠組条約の下で2020年以降に重要となる各国の気候返答対策の進捗を図るための指標の開発を目指した研究の情報を掲載しております。本研究は、環境省の環境研究総合推進費(2-1501)により実施されたものです。

プロジェクトの目的

気候変動対処を目的とした国際条約である気候変動枠組条約の下で、2020年以降、すべての国が参加する新たな枠組みが固まりつつあります。新しい枠組みでは、それぞれの国が温室効果ガス排出量抑制を目指した2030年近辺の目標を設定し、それに向かって定期的に進捗を確認することになりそうです。

目標達成そのものが義務とはならない場合、国が目標達成を目指して真摯に取り組まなくなってしまうおそれがあります。そこで、国が目標を目指すモチベーションを高められるような手続きを、定期的な進捗確認の中に盛り込む必要があります。また、今回の国際交渉では、各国が提出した2030年近辺の目標の水準の妥当性について公に審議する手続きがありません。特に対策をとらなくても達成できてしまうような目標を提示していたとしても、それが指摘されることは今のところありません。すべての国の目標を足し合わせて地球全体で必要な排出削減量に至らなかった場合どうするのか、ということも現時点では未定です。

そこで、この研究では、定期的な進捗確認を目的とした指標を開発することを目的としました。新しい枠組みでは、すべての国が参加するため、経済的にゆたかな先進国からそうではない最貧国まで適用可能な、比較的シンプルな指標とする必要があります。また、この指標がすべての国に受け入れられるためには、罰則的なものではなく、相対的にその国の努力が認められる分野や、排出削減の余地が認められる分野を明らかにすることで、今後の努力の方向性が示唆されるようなものが望ましいといえます。

プロジェクトの概要

本研究の最終的な目的は全ての国に適用される国際制度の提案ですが、進捗チェックはまず主要国で行われるべきという緊急性をふまえ、主に日本、米国、欧州連合(EU)、中国の4カ国/地域を調査対象とします。調査で得られた情報を用いて努力度指標を作成します。また、これを既往の公平性指標で測った結果と比べ、妥当性を検証します。さらに、指標案を全ての国に適用できるよう、気候変動枠組条約の下で構築されている国際制度の中での対策進捗チェックプロセスとして位置づけて、提案します。

指標の構造

指標の構造のイメージ
図1: 指標の構造
2種類の指標を併用し、真の努力と、相対的な位置を同時に確認します。

アクション(行動)指標

過去10年間で実施された政策、あるいは今後10年間で実施される予定の政策の中で、主要なものをピックアップ。政策の実施度合いによって、努力度を測ります。

表1:アクション指標の候補として検討中の政策一覧(案)
ゴール 部門 アクション指標(案)
ゴール1 再生可能エネルギーの普及 目標設定、固定価格買取制度、補助金、電力の系統や送電システム整備、社会的受容性の拡大
石炭火力発電の低炭素化 石炭火力発電所ごとの、あるいは発電部門全体での、CO2排出基準、化石燃料への補助金の撤廃
原子力発電 安全基準、事故時の対応整備
低炭素化へのインセンティブ 排出量取引制度
交通部門 低炭素排出の交通手段に対する補助金
ゴール2 産業部門 排出量目標設定、効率目標、効率改善のための補助金、政府と企業間の協定、省エネを目的とした投資拡大
民生・業務部門 新築、既築の建物に対する規制や基準、エネルギー効率の高い建物や製品への補助金
交通部門 自動車の燃費基準、低燃費車への補助金、その他の交通機関のエネルギー効率改善
ゴール3 産業部門、エネルギー転換部門でのデマンド・レスポンス 目標設定、需要側調整に関する基準や規制、デマンド・レスポンス促進のための補助金、政府と企業の間の協定
民生・業務部門における需要抑制策 BEMS や HEMS などのエネルギー管理システム、見える化、節電や節エネルギーに資する基準や規制、炭素税やエネルギー税
交通部門 不要な移動を減らす情報システム、自家用車から公共交通機関へのシフト促進、炭素税やエネルギー税
地域開発、都市開発 地域開発、都市開発低炭素なまちづくり
その他 森林、土地利用 森林保全に向けた基準や規制、補助金、木材利用促進、森林から他の用途への変更を最小限に抑える政策
HFCs などのフロン対策 HFC 使用に対する規制、製品内に含まれているフロンガスの回収・破壊
メタン 排出削減政策

アウトカム(結果)指標

10年前、現在、そして10年後に目指されている目標の時点における、その国の排出量関連の状態。他国と比較可能なシンプルな指標により、相対的な位置を確認します。5年ごとにこの指標の「現在」を更新することで、進捗を定期的に計測します。

表2:アウトカム指標(案)と、公平性に関する論点(案)
ゴール アウトカム指標(案) 公平性に関する論点
ゴール1 1. 二酸化炭素排出量/一次エネルギー総供給量 経済発展水準が高い国ほど、相対的に低い値を目指すことが期待される。
2. 再生可能エネルギー供給量/一次エネルギー総供給量 経済発展水準が高い国ほど、相対的に高い値を目指すことが期待される。
ゴール2 3. エネルギー総消費量/国内総生産(GDP) 経済発展水準が高い国ほど、相対的に低い値を目指すことが期待される。
ゴール3 4. エネルギー総消費量/人口 経済発展水準の向上に従い、一時的には増加が許容されるが、その後相対的に低い値を目指すことが期待される。
その他 5. 国の森林面積(率) 国の地理的・気象上の条件に配慮する。