推進費2-1702及び2-1908 国民対話シンポジウム
低炭素社会から脱炭素社会を目指して

開催概要

日時:
2019年11月20日(水) 14:00-17:00 (13:30受付開始)
場所:
TKPガーデンシティPREMIUM秋葉原 ホール3B
主催:
国立環境研究所 社会環境システム研究センター
環境再生保全機構環境研究総合推進費2-1702及び2-1908
※入場無料・同時通訳あり

パリ協定の合意、IPCC1.5℃特別報告書の公表など、世界は脱炭素社会の実現に向けて大きく転換しようとしています。日本も2019年6月に長期戦略(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略)が閣議決定され、今世紀後半のできるだけ早期に温室効果ガスを出さない「脱炭素社会」を目指すことが示されました。そこで、脱炭素社会の実現に向けて国際的にはどのようなことが議論され、アジアでどのような動きが見られているかについて、世界の研究者から報告をいただき、日本が脱炭素社会の実現に向けて取り組むべき課題について議論します。

プログラム

時間 登壇者(敬称略)
14:00-14:05 開会の挨拶
木野修宏(日本・環境省低炭素社会推進室長)
14:05-14:10 本シンポジウムの概要説明
増井利彦(日本・国立環境研究所室長)
14:10-14:30 「IPCCの取り組み」
P.R.Shukla(IPCC第3作業部会共同議長/インド・アーメダバード大学特別教授)
14:30-14:50 「長期シナリオの観点から」
Jae Edmonds(米国・パシフィックノースウェスト国立研究所チーフサイエンティスト)
14:50-15:10 「日本における脱炭素社会への道のり」
日比野剛(日本・みずほ情報総研次長)
15:10-15:20 休憩
15:20-16:55 パネルディスカッション:アジアの取り組みと日本
パネリスト:
高橋潔、Kejun Jiang、Rizaldi Boer、Bundit Lim、P.R.Shukla、Jae Edmonds、日比野剛
モデレーター:
増井利彦
16:55-17:00 閉会の挨拶

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Q&A

Q :
2050年にネットゼロにすることについて研究されているとのことでしたが、中国政府はどの程度本気なのでしょうか?ネットゼロを採用する可能性が高いのでしょうか?
A :
中国では、1.5℃目標は徐々に重みを増していますが、まだ政府によって正式に受け入れられてはいません。2018年11月、中国気候変動事務の解振華(Xie Zhenhua)特別代表は、1.5℃目標を実現する中国の排出経路はないと発言しましたが、2℃目標の排出経路は支援すると発言しています。これは、政府高官がはじめて2℃目標に言及したものです。私は、こうした発言は1.5℃目標が示されたことによって出てきたものと考えています。それ以降、我々は継続して1.5℃目標を達成するための中国における実現可能性について示しています。さらに、2050年までに炭素中立を実現するための産業部門の大きな変革による便益を明らかにすることで、解特別代表は1.5℃目標を達成する排出経路について言及し、意見を変えると考えています。研究成果は最近ようやく明らかになってきましたが、1.5℃を実現する排出経路についての積極的な議論が行われることを期待しています。一方で、2℃や1.5℃に向けて提案された多くの政策オプションが、大気汚染を防止するための真剣な対策として、政府によって採用されていることも事実です。
 
Q :
2030年までに温室効果ガス29%削減するうち、7割が農業・林業部門ということで そのためにcommunityを巻き込んだ活動を紹介いただきました。この活動事例の効果は、どの程度と想定されているのでしょうか。7割を占める削減目標のうち、大半をこの活動でまかなえるという試算でしょうか。 それとも、今後その他の活動を追加しなければ、達成しないという想定でしょうか。
A :
現状では、これまで開発されてきたインドネシアのMRV(Measure, Reporting and Verification)システムは、排出量を削減するすべてのコミュニティ行動を捉えることはできませんでした。地方の環境部局は、村のリーダーやコミュニティに対して、村の気候プログラムとして気候変動対策に貢献する行動を登録することを促してきました。コミュニティレベルでの行動の影響をモニターし、計測することを活用することは、現在、計画中です。
AFOLUにおける排出削減目標を達成することは、コミュニティもまた、AFOLUからの排出を引き起こす主要なドライバの1つであることから、困難です。民間部門の関与も重要で、民間部門の関与なしに排出削減目標は到達できません。譲渡された土地の多くは、森林で覆われており、法律によって、これらの土地は譲渡された者によって転換されることが可能です。政府によって出された猶予政策は譲渡された土地の外側の部分にのみ適用されます。猶予政策は一次林や泥炭地における新たな開発許可の発行を停止するもので、森林や泥炭地における新たな許可の発行によって森林の転換がこれ以上発生しなくなることを意味します。
しかしながら、多くのコミュニティは、こうしたことを破棄し、彼らの生活を支えるために森林転換を続けます(これらは、計画されてない森林伐採や計画されていない森林劣化と呼ばれています)。こうした状況に対して、政府は社会的な森林計画や農地再生を行い、コミュニティによって占拠された状況の土地を合法化し、コミュニティは政府やCSRを通じた民間からの補助金や支援を受けて森林を管理し(コミュニティベースの森林管理)、土地の生産性を改善し生産物のマーケティングを進めてきました。コミュニティの生活を改善し、彼らの意識向上を図ることで、こうしたことは可能となるでしょう。AFOLUにおける排出のドライバを改善することは単純ではなく統合的なアプローチが必要となります。気候農村を通じて、政府は 優良な慣行を登録し報奨することで、森林や廃棄物を含んだ土地を管理するコミュニティによる優良な慣行を促進し、こうした事例から学んだ教訓をその他のコミュニティが適用、模倣できるようにしています。コミュニティを支援する改良普及員やNGOの役割は、きわめて重要です。

本シンポジウムは
平成31年度環境再生保全機構環境研究総合推進費2-1702及び2-1908の研究助成で実施しております。

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