環境経済・政策学会2009年大会
企画セッション報告

本ページは、2009年9月27日に千葉大学で行われた環境経済・政策学会2009年大会の企画セッション『温室効果ガス削減の中期目標に向けたこれまでの検討と今後の見通し・日本の進路』の概要をとりまとめたものです。各報告で使用された資料とあわせて、低炭素社会の構築に向けた議論の基礎資料として活用して下さい。

なお、ここで示されている報告内容は、報告者の個人的見解を含むものであり、各機関の公式見解を示したものではないことをお断りしておきます。

(以下、敬称略)

配付資料はこちら

第一部

  1. これまでの議論の整理(PDF/325KB)
    ○増井利彦(国立環境研究所)
  2. 国際的な視点から見た我が国の温暖化対策の費用と削減ポテンシャル(PDF/552KB)
    ○花岡達也(国立環境研究所)
  3. 日本における対策と影響(PDF/509KB)
    藤野純一(国立環境研究所)
  4. 温暖化による被害(PDF/480KB)
    ○中嶌一憲(東北大学)
  5. 温室効果ガス削減における衡平性(PDF/278KB)
    ○亀山康子(国立環境研究所)
  6. 今後の展望(PDF/422KB)
    ○加藤聖(環境省)

主な質疑・コメント

  • 対策について投資コスト全体に対して何%までを考えているのか?
  • 限界削減費用による公平性の議論は正当化されるのか?
  • 公平性と効率性の議論が混同されている。
  • コンセプトの部分での情報発信は必要。
  • そもそも市場が公平ではない。
  • 限界削減費用の実体とは?
  • 社会全体の費用最小化と負担は別の問題。

第二部 総合討論 低炭素社会に向けた日本の進路

総合討論進行について(PDF/94KB)

パネリスト

1.「中期目標」における議論の過程、目標値等に関する意見

末広:
3Eのバランスと時間の有効活用。
革新的技術と低炭素化のインセンティブ
技術立国を目指して
森:
温暖化対策は、中長期的なリスクとして認識。
日本の対応政策が十分でない場合、長期的に企業競争力が低下するという市場からの評価に繋がることも考えられる。
物的資源乏しき日本としては、低炭素社会構築に伴う内需拡大、それによる国際競争力強化を考えるべき。
多排出産業は、総量規制を基礎にしつつセクター別アプローチを活用するといった形で、国際交渉との連携も必要。
山岸:
何のための中期目標か?何を達成するのか? 危険な気候の変動を防ぐために日本は排出を減らし、他国の削減を促すとともに、長期での大幅削減に備える。
十分に行われなかった点:対策を行わない場合の費用/日本における影響/海外の影響が日本に間接的に及ぼす影響
先進国の目標は十分か? 先進国の相当な削減を前提したとしても、途上国も大幅削減が求められる;途上国支援・途上国への対策は?
今後は、対策とその効果の可視化(Wedge)と対策を後押しする政策。

2.温暖化対策にむけた長期的な社会のあり方・展望について

藤野:
温暖化問題とエネルギー問題は一体であり、自給率4%の国のエネルギーセキュリティについての議論が必要。温暖化対策に関連するマルチベネフィットの検討を。
新産業のあり方と日本が世界の低炭素化にどう役立つか?
末広:
炭素生産性では、大変革が必要。省エネでは限界があり、炭素フリーエネルギー導入が必要。
新しい技術を受け入れる社会。
山岸:
先進国の排出は0に近づける努力が必要。
人口減少、地方のあり方について検討。
早い段階で計画が求められる可能性も。
森:
技術開発、普及、改善、インフラ投資等といったプロセスを考えれば、排出削減の実現までに時間がかかる。
これまで軽視されてきた、排出削減や技術開発のための「インセンティブ」をどう付すか?という点が重要。そのためには、金融や情報開示、税といった、既存の経済のソフトインフラを積極的に活用していく枠組み構築が必要。
加藤:
温暖化対策は、気候変動リスクに対する防衛費と言っていた経営者が存在。
現在は高額だが、国際競争力、国内の地方活性化を念頭に普及を進め将来は安価に。
長期的には、化石燃料を産業に優先配分する代わりに技術開発をお願いし、民生、運輸では化石燃料を極力使わない、といった大胆な発想が80%削減には必要。
電化シフトや長期削減を考えると電力の責任は重大で電力からの排出量はほぼゼロにすることが必要。

3.長期を見据えた上でのCOP15に向けて(日本の役割、戦略等)

森:
あるべき姿と国作りをどうするか?早いタイミングで経済のあり方についての方向感がある程度の具体性を持って示されるべき。
国際的な目標達成を第一においた主張と具体的なソリューションを併せて提示していくことが重要。貢献しやすい部分を、うまくコミットメント評価に組み込むことが重要。たとえば、途上国のインフラ投資や小規模削減といった重要課題について、技術移転、資金援助、総量目標との緩やかなリンケージを持たせるような枠組みを提案していく。
加藤:
交渉官として存在感をもってどう議論するか?途上国をどう引き込むか?
米国をどう引き込むか?ある程度米国を優先する理由づけが最終的には必要になるかもしれない。
国内対策の経営判断としてどこまでの削減を目指すのかの検討も必要か?
末広:
環境と経済:どちらも犠牲にできない
理想と現実:両者の歩み寄りが必要
長期と短期:時間軸を考える
地球益と国益:バランス
目標と約束:目標実現に向けて努力。約束は守らないといけない(できない約束はしない)
実現可能性と受容可能性の検討:技術、経済、社会、政策から
藤野:
各国の低炭素社会シナリオを開発している。これが温暖化交渉が目指す目的の1つになってほしい。
温暖化、持続可能な社会の開発のような解決すべき問題に対しては、できない理屈ではなくできる理論で。
山岸:
長期的には外交でも重要な分野。国際社会において日本は重要でなくなっている可能性もあり、気候変動を生かすことも。ミドルパワーの外交として、活躍できる分野としての温暖化
COPまで:鳩山イニシアチブの具体化/比較可能性や公平正/対米をどう考えるか

4.自由討議、質疑・コメント

  • CDM等をどう考えるか?
  • 技術を売って回収するなどの制度設計を提案することも必要。Howの議論。
  • 米国とバブルを組んで対策を進めることも
  • セクター別アプローチの現状は?
  • 日本の技術を移転し、Win-Winとなるイニシアティブが必要。
  • 投資回収年数の長いものはリスクが高くなる。官民あわせたスキームが必要。
  • ODAとの関係

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