推進費2-1908、1-2002、1-2003 国民対話シンポジウム
日本の2050年脱炭素社会
開催概要
- 日時:
- 2021年3月10日(水)14:00-16:30
- ※機器トラブル等で配信開始が遅れる可能性がございます。あらかじめご了承ください。
- 場所:
- オンライン開催(Zoom Webinarを使用予定)
※発表言語は日本語となります。 - 主催:
- 国立環境研究所 社会環境システム研究センター
- 環境研究総合推進費2-1908、1-2002、1-2003
- 資料:
- リーフレット(PDF/737KB)
2020年10月に菅義偉大臣は所信表明において「日本は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。それまでの目標は、2050年の温室効果ガス排出量を80%削減し、21世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現するというものでした(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略)。しかしながら、2050年の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることは容易ではありません。本シンポジウムでは、環境研究総合推進費2-1908等で取り組んでいる日本における脱炭素社会の実現に向けた研究成果を紹介するとともに、そのほかの機関で検討されている同様の分析結果を共有することで、どのように2050年の脱炭素社会を実現すれば良いかを議論していきます。
プログラム
時間 | 登壇者(敬称略) |
---|---|
14:00-14:05 | 開会挨拶 中島恵理(環境省) |
【第1部】推進費の課題が示す脱炭素社会の姿 | |
14:05-14:15 |
開催趣旨説明:脱炭素社会の世界の動き 増井 利彦(国立環境研究所) |
14:15-14:30 |
2050年脱炭素社会実現の姿に関する一試算 日比野 剛(国立環境研究所) |
14:30-14:45 |
資源・エネルギーを活用した脱炭素地域の実現に向けて:計画分析モデルの開発と具体地域での実証 芦名 秀一(国立環境研究所) |
14:45-14:50 | 休憩 |
【第2部】様々な脱炭素社会の姿 | |
14:50-15:05 |
ネット・ゼロという世界を考える 栗山 昭久(地球環境戦略研究機関) |
15:05-15:20 |
2050年再生可能エネルギー100%社会の研究 槌屋 治紀(システム技術研究所) |
15:20-15:35 |
自然エネルギー100%で実現する日本の2050年ネットゼロ ミュリエル ガニュバン(Agora Energiewende) |
15:35-15:40 | 休憩 |
【第3部】脱炭素社会の実現に向けて | |
15:40-16:25 | パネルディスカッション パネリスト:日比野 剛、芦名 秀一、栗山 昭久、槌屋 治紀、ミュリエル ガニュバン ファシリテーター:増井 利彦 15:40-15:55 プレゼンテーションに対する質疑応答 15:55-16:25 総合討論 |
16:25-16:30 | 閉会の挨拶 亀山康子(国立環境研究所) |
※都合により、プログラムの変更がある場合がございます。
発表概要・登壇者プロフィール
2050年脱炭素社会実現の姿に関する一試算
2050年脱炭素社会を実現した絵姿を定量的に具体化し、社会変容、電化、水素など特定の対策を強調したシナリオやネットゼロ排出達成を前提としたシナリオなど、複数シナリオによって将来の削減可能性を推計した。その分析から、低エネルギー需要に向けた社会変容、電化と再生可能エネルギー発電ポテンシャルの最大活用、実用化された脱炭素技術の早期最大限導入、新技術の開発・導入加速化などの必要性が示唆された。
日比野 剛
国立環境研究所 社会環境システム研究センター 研究連携コーディネーター(アジア太平洋統合モデル担当)。2020年6月までみずほ情報総研に勤務、2020年7月より現職。1990年代初頭からアジア太平洋統合評価モデル(AIM)の開発に関与。我が国の中長期目標検討に貢献。東京理科大学理学研究科修了。
資源・エネルギーを活用した脱炭素地域の実現に向けて:計画分析モデルの開発と具体地域での実証
わが国が脱炭素社会に向かっていくためには、国全体と同様に地域・都市スケールでの脱炭素化を進めていくことが不可欠である。そのためには、土地利用や都市構造を踏まえ、地域の資源やエネルギーを最大限に活用したシナリオを描き、それを実現していくことが重要となる。本報告では、環境研究総合推進費(2-1711及び1-2003)の成果をもとに、地域エネルギー資源とストック型地域資源を活用した脱炭素都市を計画する手法と具体地域での適用例を紹介し、脱炭素都市・地域のあり方についての検討成果を報告する。
芦名 秀一
青森県八戸市出身、2006年東北大学工学研究科修了、博士(工学)。2006年より国立環境研究所にて勤務し、2014年より主任研究員、2017年より国際室長。専門は機械・システム工学。日本およびアジアにおける国及び都市スケールでの脱炭素社会およびその実現のための道筋検討研究に取り組むとともに、近年はICT・IoTやAI的なアプローチを活用したデータ分析手法開発やその気候変動緩和研究への応用について取り組んでいる。
ネット・ゼロという世界を考える
本発表では、ネット・ゼロ社会の実現を図るための考え方の一つを示します。具体的には、広範な社会変革を伴いながらネット・ゼロ社会を実現していくトランジションシナリオと、様々な事情により社会変革がほとんど起きないロックインシナリオの2つのシナリオを対比しながら、エネルギー需要の動向を中心とした定量的な分析結果を紹介いたします。加えて、トランジションシナリオを中心に、本レポートで展望した定性的な社会像を紹介いたします。
栗山 昭久
2011年より、地球環境戦略研究機関(IGES)研究員として東南アジア諸国のエネルギー部門におけるCO2削減プロジェクト導入支援や京都メカニズムなどの国際的なメカニズムの定量的評価・制度構築支援を行ってきた。日本おいては、脱炭素社会に向けたエネルギー問題(長中期シナリオに基づく政策評価、炭素中立(ネット・ゼロ)社会に向けたエネルギー収支分析、再生可能エネルギー拡大に向けた電力システムや雇用に関する問題)に取り組んでいる。工学博士。
2050年再生可能エネルギー100%社会の研究
2030年には、石炭火力を廃止でき、その分はガス火力+太陽光+風力で供給。石炭からガス火力への代替費用は年間4000億円程度。電力の50%が再エネになる。CO2排出量は50%削減できる。2050年には、再エネ100%になりCO2はゼロに。人口が80%に減少し、30%の効率化によりエネルギー需要は45~50%に減少する。産業構造の転換により鉄鋼・セメント・化学・製紙の活動が50~60%に減少し、情報機械産業が増加する。鉄鋼生産の70%は電炉、30%は水素製鉄で生産。乗用車はすべてEVになり効率が3~4倍に向上。太陽光360GW、風力153GWになり、国土面積の1~2%を使用する。
槌屋 治紀
株式会社システム技術研究所 所長。東京大学大学院機械工学科卒業、工学博士。100%再生可能エネルギー社会と二酸化炭素削減シナリオを研究。太陽電池のコスト低下を学習曲線により分析。IPCCの報告作成に協力。著書に「エネルギー耕作型文明」(東洋経済)、「これからのエネルギー」(岩波書店)など。
自然エネルギー100%で実現する日本の2050年ネットゼロ
日本でも、自然エネルギー100%のエネルギーシステムへの転換により、2050年のネットゼロが実現できる。世界各地の自然エネルギーベースの脱炭素化を研究してきたフィンランドのラッペンランタ工科大学、ドイツのエネルギー転換を専門とするシンクタンク、アゴラエネルギーベンデと自然エネルギー財団の協働で、日本の脱炭素化に向けたコスト最適な道筋を明らかにした。2050年には、多くの用途が自然エネルギー電力で賄われ、電化の難しい部分は、自然エネルギーで作られたグリーン水素・合成燃料がカバーする。環境、経済、安定性、安全性(3E+S)どれをとっても現在より優れたエネルギーシステムへ移行することが可能だ。
ミュリエル ガニュバン(Murielle Gagnebin)
アゴラ・エネルギーベンデ(シンクタンク、Agora Energiewende)マネージャー。東京にあるフランスの公立学校リセ・フランコ・ジャポネ中学在学中にパリ居住となる。ドーフィンヌ大学経済学部修了後、ESCPグランゼコール(経済・経営学)の修士取得、2010年卒業。エンジー(ENGIE、旧GDF Suez)にてパリ、ブリュッセル、ベルリンでの再生エネルギー投資計画やグループ再エネ政略の開発等の課題に取り組む。2015年よりパブリック・アフェアーズ兼ビジネス・デベロップメント・マネージャーとして、ベルリンをベースとするe-モビリティー分野の企業を経、2018年より現職。脱炭素化に向けた気候・エネルギー政策の研究と、それに基づく中長期戦略の提言等を、主にフランス並びに独仏協力部門で行っている。
本シンポジウムは環境研究総合推進費2-1908、1-2002、1-2003の研究助成で実施しております。